近年、ネズミ・イタチ・ハクビシン・コウモリといった害獣が住宅や倉庫、商業施設に侵入し、被害が深刻化しています。
害獣は一度住み着くと、天井裏や壁の中で巣を作り、糞尿や悪臭、断熱材の破壊、配線のかじりによる火災リスクなど、多大な被害をもたらします。
被害を未然に防ぐために重要なのが「外壁や屋根の定期点検」です。
本記事では、建物の構造的な弱点と、一般家庭でも実施できる点検・補修方法を、プロの視点から徹底解説します。
1. 害獣が侵入してくる主な経路とは?
害獣は驚くほど小さな隙間からでも侵入できます。代表的な侵入口は以下の通りです。
- 屋根瓦の隙間
- 屋根裏の通気口
- 外壁と屋根の取り合い部分
- 軒天(のきてん)の破損部
- 換気口・エアコンダクト周り
- 基礎の通風口
- ひび割れた外壁の隙間
例えばネズミは直径2cmの穴があれば侵入可能です。イタチやハクビシンは意外と体が柔らかく、わずか5cm程度の隙間からも侵入できます。コウモリはさらに小さく、1cm未満の隙間でも入り込むことができます。
つまり、私たちが「大丈夫だろう」と思っている小さな隙間が、実は害獣にとっては絶好の入口になっているのです。
2. 外壁・屋根でチェックすべきポイント一覧
日常的な点検で注目すべき部位をリスト化しました。ここを意識して確認すれば、侵入リスクを大幅に下げられます。
(1) 屋根瓦の浮き・ずれ
強風や地震の影響で瓦がずれていると、そこから小動物が侵入。
特に日本瓦は重みでずれやすく、定期点検が必要。
(2) 棟板金(むねばんきん)の浮き
スレート屋根や金属屋根の頂部を覆う板金が劣化で浮くと隙間が発生。
雨水の浸入だけでなく、イタチ・コウモリの侵入口になる。
(3) 軒天(のきてん)の破損
経年劣化や鳥のつつきで穴が開くケースが多い。
屋根裏へ直通するため、最も危険な侵入口の一つ。
(4) 換気口・通風口
通気を確保するための格子が壊れていると害獣が侵入。
コウモリやネズミがよく利用するルート。
(5) 外壁のひび割れ
モルタルやサイディングの割れ目から徐々に広がり、最終的に害獣の侵入口となる。
雨水の浸入による建物劣化も併発する。
(6) エアコンダクト・配管まわり
パテやコーキングの劣化により隙間が生じやすい。
ネズミやムカデ、ゴキブリなど多様な害虫・害獣の入口。
(7) 基礎部分の通気口
鉄格子が曲がっていたり網が破れていると、ネズミやイタチの通路に。
床下に侵入されると発見が遅れやすい。
3. 一般家庭でもできる日常点検方法
害獣侵入を未然に防ぐには、日常的なセルフチェックが有効です。以下は自宅で簡単にできる確認方法です。
屋根まわりのチェック
- 雨樋の掃除時に、屋根瓦の浮きや板金の浮きを確認
- 双眼鏡を使って地上から目視点検も可能
- 高所作業は危険なので、無理に登らず業者点検を推奨
外壁の点検
- 外壁を一周歩いて、ひび割れやコーキングの劣化を確認
- ひびが0.5mm以上ある場合は専門業者による補修が望ましい
換気口・通風口
- カバーの破損や金網の劣化を確認
- 必要に応じてステンレス製の防獣ネットを取り付ける
庭や基礎まわり
- 基礎の通気口が曲がっていないかチェック
- 庭に動物の足跡や糞が落ちていないか確認
4. 自分でできる応急補修と防除方法
点検で小さな隙間を発見した場合、DIYで応急処置することも可能です。
- コーキング材:外壁や配管まわりの隙間を埋める
- 防獣ネット:換気口や通風口に取り付けて侵入防止
- 金網(ステンレス製):基礎通気口や屋根裏通気口のカバー補強
- 防獣パテ:ネズミがかじりにくい専用パテでダクト穴を封鎖
ただし、害獣がすでに住み着いている状態で隙間を塞ぐと、建物内部で繁殖・腐敗するリスクがあります。気配を感じたら、必ずプロに相談しましょう。
5. プロが行う点検・補修の流れ
- 現地調査:建物を360度チェックし、侵入口を特定
- 屋根裏点検:糞尿・足跡・断熱材の荒れを確認
- 侵入口封鎖工事:金網や板金で確実に封鎖。美観を損なわない施工
- 内部清掃・消毒:害獣が残した病原菌を除去し、再発防止の薬剤処理
- 定期メンテナンス提案:半年〜1年ごとの点検プランを案内
6. 点検を怠ると起こる被害事例
- ケース1:ネズミ侵入による火災寸前
天井裏で配線をかじられ、漏電寸前の状態に。
- ケース2:イタチの糞尿で断熱材が腐敗
家中が異臭に包まれ、リフォーム費用が200万円以上に。
- ケース3:コウモリの大量糞害
軒下に黒いシミが広がり、住人がアレルギー症状を発症。
これらは「もっと早く点検していれば防げた」事例です。
7. 日常点検チェックリスト(保存版)
- 屋根瓦・板金に浮きや破損はないか
- 軒天に穴や割れはないか
- 外壁にひび割れはないか
- 換気口カバーが壊れていないか
- エアコンダクト周りに隙間はないか
- 基礎の通風口の格子が曲がっていないか
- 庭に動物の足跡や糞が落ちていないか